差別感情と差別行動

地獄へ道づれ - 男の魂に火をつけろ!
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20100502
HIVキャリアを理由に看護師を解雇することは正当か? - NATROMの日記
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100501#p1
をはじめとして「正論」は既にそこら中に載っているので、あまり高潔ではいられない弱い人間としての私見を書いておきます。

レベル0:不安を感じるのは仕方ない

上記のNATROM先生の言を信じるのであれば、科学的に見れば感染のリスクは極めて小さいそうです。他にリスクの大きな要素は山のようにあり、気にする事は無い、そう結論づけられています。
しかし、大病のキャリアが病院で自分の看護をする、という状況は、正直な話、不安なものでしょう。少なくとも私は何となく不安です。
別に医療分野に限った話でもなく、学校の同級生なり行きつけのレストランのウェイターなりがHIVのキャリアだ、という感染リスクがより低い状態ですらも、何となく不安に思う人も多いと思います。安全と安心は違うものです。
不安に思う事、嫌悪感を持ってしまう事自体は、悪い事ではない、私はそう思います。

レベル1:我慢できない自分を恥じるべき

少なくとも私にとって、看護師がHIVに感染している、という状態は不安です。なので、同じように不安に感じる人がいたとしても、私はそれを責めません。
まず大事なのは、この不安には正当な根拠はない、感情の問題だという認識を持ち、内心の不安を表に出さないようにする事だと思います。内心どんな意識を持っていようと、それを表に出しさえしなければ何の問題もありません。

53 : ヘビギンポ(catv?):2010/04/30(金) 09:04:09.86 id:BN2+YOl4
差別じゃなくて区別
採血とか点滴とかが業務としてある職業にHIVキャリアが居るって怖すぎだろ

俺ならそんな病院絶対行かない

不安であっても、客観的見地から見て心情面以外に問題は無いのですから、行動に移してしまったら正当な区別ではなく、差別になります。科学的知識で、理屈で、体面で、正義の信念で、自分のこころの弱さや不安に向き合い、立ち向かうべきです。

レベル2:自己正当化しない

仮に、自分の担当看護師がHIVキャリアだと途中で分かったら?不安に思う人は多いでしょうし、その不安に耐えられず交代を申し出る方もいると思います。人は弱いものですし、それはある程度は仕方ない事なのかな、と思っています。自分もその立場になったら、差別せず毅然と振る舞えるかは正直難しい所だと思います。
ですがその場合も、悪いのは相手ではない、自分の感情に振り回されている私の弱さのせいである、という事に自覚的である事が、人として最低レベルの守るべき一線である、私はそう思っています。

5 : トド(静岡県):2010/04/30(金) 08:59:35.28 id:BGTCqQXD
あたりめーだろ
病院側との雇用うんぬんじゃなくて
こいつと関わる患者の立場になってみろや
偏見とかじゃなくて、感染のリスク億が一でもあるんだから

自分の内心の不安や偏見が理由なのに、あれこれ理屈をつけて自己を正当化する姿勢は、許容できません。

まとめ

  1. 不安を感じない(感情レベル)
  2. 不安は感じるが、行動には決して出さない(行動レベル)
  3. 不安は感じ、行動にも移してしまうが、自己を正当化しない(理屈レベル)
  4. 不安は感じ、行動にも移し、自己を正当化する

一番上は理想ですが、恐らく多くの人には不可能です。二番目は立派な人で、常にここを目指すべきですが、人は完全ではないので、難しい事もあるでしょう。人は、常に道徳の教科書に書いてあるように生きられるほど強くないと思います。ですがその場合でも、三番目だけは人として譲ってはいけないラインだと思います。自分の弱さ、自分の間違いを弱者に転嫁してはいけません。
という、清く正しく生きられない人のための妥協ラインの引き方講座でした。

ソフトバンク発表会祭に見る、孫正義の「現実歪曲時間」

ここ1年で最高の祭だった。iPad祭が吹き飛ぶ勢い。

ustに目を付けるのは流石、というレベルだが、凄いのは、それを「祭り」に仕立て上げた手腕。神がかっているとしか言いようがない。

まとめ

  • ソフトバンクは、ニュースリリースのタイミングを発表会より少し前に設定した
  • タイミングが完璧だったため、twitterでその話題を見た人間は自然に発表会のustに吸い込まれた
  • 発表会の場に同時にじゅうぶん大きな人数が集まる事により「祭り」が発生、発表会は発表会ではなく、参加型のイベントに化けた
  • これは、「ustとtwitterの組み合わせで何が起きるか」のデモを兼ねた壮大な実験であり、つまりは社会をtwitterとustへ誘導するための布石

経緯とか

各ニュースサイトに取り上げられたのは、おおよそ15:00以降*1
経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版(15:04)
ソフトバンク、動画中継の米Ustreamに約18億円を出資 - CNET Japan(15:20)
ソフトバンク、Ustreamに18億円出資 - ITmedia NEWS(15:46)
そしてustでの配信がなされた決算説明会が16:30

旧来の演出的な考え方だと、この規模の発表は、ニュース自体のバリューを最大化するように決算説明会の場で同時に行なうのが普通だろう。複数の発表をまとめて大きなものにし、話題性を大きくする。
意図的に日付をずらすにしても、数日とか一週間程度のスパンを空けるだろう。各発表が被らないようにして、自社の名前が露出する機会を最大化するのが狙い。常に何かしらの動きがあるイメージを演出する事で、活きのいい企業、というイメージを与えられる、という効果もある。

リアルタイムと参加のリズム

今回ソフトバンクが仕掛けたのは、このいずれでもない。
投資の発表から決算説明会までのおよそ1時間30分の間隙は、新聞やニュースサイトでの情報流通を考えたものではない。投資の発表がtwitterでbuzzる事を予測し、彼らを即時決算説明会に誘導し、さらなるbuzzを狙いに行くための最適なリズムを選んでいる。明らかに「リアルタイムweb2.0」の流れを踏まえた上でのリズム感で、見事としか言いようがない。
投資発表がもう1時間早ければ熱は冷めていただろうし、もう1時間遅ければ参加者は激減していただろう。日本国内でここまで見事にリアルタイムwebを活かしきった出来事は、間違いなく歴史上初だ。
ustへの投資発表という撒き餌で人々をustに集め、自社の発表会を「視聴」させるのではなく、一体感を持って「参加」させる。一方通行であるはずの決算発表会というイベントを、ニュースリリースのタイミングひとつで参加型の「祭り」へ変質させる。発表会を本当に「イベント」にしてしまったニコニコ動画とは違う形で、参加型の発表会を見事に実現した。

その「時間」にいた人を引き寄せる

元々ソフトバンクは、Appleのような強大な信者軍団を持っているわけでもなかった。にも関わらず、ちょっとしたニュースリリースの仕掛けで、たまたまtwitterをその時間見ていただけの人々を、熱狂の中へ引き込んだ。
ジョブスのgoogle:現実歪曲空間のように、世界を創り、信者たちによる「場」を作るわけではなく、その瞬間に居合わせただけの人を否応なく引きずりこむ、いわば「現実歪曲時間」を発生させるセンスは見事*2
おまけにこれが単なる自社の露出機会獲得ではなく、今後ustを売り込んでいくための布石にもなっているのだから見事だ。要するにtwitterustreamを使えば、世界をここまで変えられる」というのを自ら実演してみせたわけだ。

実に見事。

*1:多分、東証が15時に閉まるからじゃないかと思ってる

*2:Appleとは違い、落ち着いてみるとそこまで大きな革命が起きたわけではないのだが、あの瞬間の熱狂は凄まじいものがあった

iPadにFlashが載らない意味

iPadFlashが載らない事が判明し、方々で非難の嵐が吹き荒れている。さて、何故AppleFlashiPhoneiPadに載せるのを執拗に嫌がるのだろう?

webプラットフォーム争奪戦、その勝者

少し昔話を。昔からブラウザと言うのは互いに足の引っ張り合いをしてきた。MSはHTMLの解釈を捻じ曲げ、「IEでしか動かないサイト」を増やすことでIEのシェアを維持し、また仕様を自分たちに都合のいい方向に力技で誘導してきた。その結果の弊害として、HTML+CSS+JavaScriptでリッチ・コンテンツを提供するのは事実上不可能になった。MSはActiveXを使ってWindows/IEのシェアを磐石なものにしようと画策したが、予想外のところから伏兵が現れた。アニメーション・ツールだったはずのFlashインタラクティブなアニメーション作成ツールになり、そしてリッチなインターフェイス作成用のツールとしてさらに進化、シェアを伸ばしたのだ。
Adobeはブラウザを持たないので、すべてのブラウザで動作させることができる。サイト毎のインストールが必要なActiveXと違い、Flash Playerは一度インストールすれば全サイトで使える。何より、Flash Player内ではブラウザ間の依存性について気にしなくて済む(厳密にはそこまで甘くないが、かなり楽なのは事実)。動画だって音声だって余裕で扱える。あっという間に、web上のリッチコンテンツFlashの独壇場になり、Flashプレイヤーのインストール率が、IEのシェアよりも高い、という事態に陥った。標準であるはずのHTML+JavaScriptでサイトを作るより、1プラグインに過ぎないFlashで作るほうがリーチが広いのである。
IE脅威論を唱えていた識者は多かったが、Flash Playerがここまでの勢力に伸びるとは誰も思っていなかった。戦争の最前線、差別化要因であるリッチコンテンツを、突然出現した独立国Adobeに抑えられてしまい、IE王国とAppleMozillaなどの諸侯は強制的に休戦に入る。これが、私の目から見たブラウザ戦争の流れである。

HTML5では、Flashに比べ遜色ないアプリケーションが構築できる

さて。現在仕様が考えられているHTML5は、Ajaxアプリケーション全盛期である情勢を反映して、現在のwebアプリとは比較にならないレベルのアプリケーションが作成できるようなものになっている。YouTubeプレイヤーどころかニコニコ動画プレイヤーだって作れる。さらにローカルにデータを保存できるからオフラインでも使用可能だし、3Dだって音声だって使えるのでゲームも作れる。GoogleDocs、Gmailなど、web2.0アプリの文脈から出現したHTML5は、今まで通りの使命「セマンティック・ウェブの実現」に加え「webアプリケーションを容易に作成可能にする」「webアプリケーションとクライアント・アプリケーションの垣根を取り去り、すべてをwebに集約する」という側面も持つ。
HTML5が普及しきれば、Flashは不要になる。

iPadユーザーはネットゲームの70%、ウェブ動画の75%はじめ、ウェブコンテンツは十全に楽しむことができない

なんていうのは、過渡期だけの話なのだ。

GoogleApple、パブリックエネミーAdobe

理由は後に回すとして、現実として「Flashが不要になる未来」は、iPhoneに一足先に訪れる。
AppleHTML5を強力に推進している。HTML5はCanvas3Dで3Dグラフィックを扱う事ができるのだが、これが現在最速で動くのは、iPhone上のSafariである(スペックの分iPadの方が速いはずだが、iPadは知らないのでパス)。また、iPhone用に最適化されたサイトは基本的に0から作らないといけないので、既存のFlash資産に足を引っ張られない。
AppleがMSと同じ戦略を取るのであれば、これからHTML5を独自拡張しまくって(orバグを埋め込みまくって)他社のブラウザが追従不可能になるようにする手もある。が、これだとiPhone=モバイルインターネット世界は握れても、PC世界でIEのシェアを脅かすのが困難になる。IEに加え、Google Chromeも脅威として加わる。下手に独自拡張を重ねて、GoogleのサービスがSafariでは動かなくなってしまうと、Appleにとって大きな打撃になる。
HTML5標準とともに歩むことで、「標準に準拠せよ」という大義名分でIEにプレッシャーを与えつつ、Googleと協調路線を歩く事ができる。Googleの戦略は全ブラウザで動くwebサービスを作る事であり、従ってもっとも標準化を望むのがGoogleなのだ。Googleの狙いはwebサービスとしてのシェアであり、ブラウザシェアは副次的なものに過ぎない。MSがIEを中心に戦ったのとは違って、GoogleChromeを中心に戦う気はない。Googleの主戦場は「ネットの向こう側」なので、ここに多くを割く事はできない。
という事で、GoogleAppleHTML5を通して手を組み、標準化の名の下にFlash=Adobeをパブリックエネミー認定、まずはモバイルインターネットの世界からFlash Playerを駆逐し、そのうち他のデバイスからも…という構図ができてくる。

AppleFlashを駆逐する意味

さて、先送りしたAppleFlashを駆逐する理由にいこう。一言で言うと、Flash Playerが不要になる事である。
Appleがもっとも得意なのは「エクスペリエンスを作る」事。つまり、ハードとソフト両面を含んだ、トータルなサービスを提供する事。Appleは今後もiPadのように様々なハードウェアへ進出していく事が考えられる。そんな時、リッチ・コンテンツがAdobeに抑えられていると、いちいちその顔色伺いをしながらハードウェアを作らなければいけない。「Flashが動かないから***なんて使えねぇよ」という状況がいつまでも続かれると困るのである。
(ゲーム機を見ると分かりやすい。PS3WiiFlashさえなければインターネット閲覧端末として比較的いい線行っているし、DSiFlashさえなければもう少し使い勝手のいいハードになっていたはずだ)
HTML5であれば標準化されているので、自前で勝手に対応する事ができる。iPhoneでwebページを見た時の使いやすさを考えると分かる。Flashで作られたサイトは、サイト作成者に制御を必要以上に持っていかれてしまうので、Apple側でインターフェイスを制御できないのだ。Appleは、あらゆるデバイスで共通なものをHTML5で、デバイスに依存するものをApp Storeで、という感じで住み分ける未来図を描いているのではないだろうか。

おまけ

省いた色々な材料。気が向いたら書くかも。

  • Nexus OneはAndloid StoreでApp Storeに対抗するための手段。iPhoneと対抗させているのは「そうせざるを得ない」だけで、App StoreがなければNexus Oneはなかった
  • iPadは「『本』を最大限に拡大解釈した電子ブックリーダー」が狙ってきたラインで、そこに興味のない層には当たったらラッキーくらいの位置づけに見える

コロぱた

コロぱた

コロぱた

某ふたばで噂を聞き購入。最近口コミでじわじわと売れているという噂のゲーム。一言で言うと「ピタゴラスイッチを作って女の子(ひまわり)をゴールに誘導するパズルゲーム」。
各ステージには「ひまわりを特定の場所へ連れて行け」「カゴの中に鉄球を入れろ」のような終了条件がある。で、初期配置されているアイテムや地形(動かせない)と、手持ちのアイテム(自由に設置可能)を組み合わせて条件を満たしていく。
単純なピタゴラスイッチと違うのは、「ひまわり」がボールではなく人間である事。ひまわりには体力と「ご機嫌」が設定されていて、高所から落ちたりバナナの皮で転んだりすると、体力がなくなったり機嫌が悪くなったりする(ケーキなどを食べさせると回復する)。ひまわりはとても気分屋で、機嫌が悪いとケーキやボールを蹴飛ばしたり、体力が低いと歩く速度が落ちたりと、状態によって違った動きをする。
また、鉄球やボール、ドミノ板など、大半のアイテムは物理エンジンによるリアルな挙動をするが、「レーザーのような光線を放つ懐中電灯」や「マンガ的な飛び方をするミサイル」「胡散臭い効果範囲で鉄球などを引きつける磁石」「猫」など、物理的でないアイテムも多く存在する。純粋な物理パズルはバリエーションに限度があり、数pxの配置を延々といじるような地味なものになりがちだが、こういうゲーム的、マンガ的なアイテムによって、パズルがとても面白くなっている。
オートセーブで、かつ1ステージが短いので、ちょっとした時間にやる事ができるのも美点。微調整系は時間を食われるが、閃けば一発で終了、系のステージはサクサク消化できる。
8ステージくらいごとにシナリオパートが入るが、これも良い。よつば(よつばと!)のような元気で明るいひまわりを中心にほのぼのストーリーが入って、ひたすら地味な本編の息抜きになる。
そしてひまわり!バカ可愛いよひまわり!猫がいれば撫でて(機嫌が悪いと蹴飛ばすけど)、チョウチョがいれば追いかけて、びっくり箱があれば飛び上がって逃げて、バナナの皮があればお約束通りにすっ転んでくれる。物理ゲーというのは味気ないものだが、ひまわりがいるおかげで無味乾燥な物理パズルゲームが親しみやすいものになっている。

難点は物理パズルゲームの宿命か、「解き方は自明なのに、それを実現するためにアイテムの配置を細かく微調整する作業」が結構入ること。特に効果範囲の謎な磁石がとてもダルい。ただ、アイテム配置は見えないグリッドにそって行なわれるため、1pxずつズラす必要があるゲームに比べれば、手間はかなりマシになっている。ひとつのアイテムの配置を決めるだけなら、10トライもすればだいたい決まるだろう。システム的にも繰り返し試行はかなりしやすくなっている。
それと、物理パズルにしては、解法の幅がとても狭い。これは好みの分かれるところだろう。「別解」を使えるステージは極めて多いが、あくまで「別解もある」という感じであって、「無限の解き方がある」と言えるほど自由度が大きくない。ただ、この制約によって一般的な意味での「パズル」としての完成度が上がっているのも事実なので難しいところ。

結論としては、普通に根気のあるパズル好きにはオススメ。特に「物理パズル」というジャンルのゲームを知らない人(PCでパズルゲームをしない人は大半が未経験だろう)は、新しい世界を見られると思う。キャラ萌えゲーとしても悪くないが、それだけを目当てにするには時間がかかりすぎるだろう。

リアル脱出ゲーム「廃倉庫からの脱出」行ってきた

2回目のリアル脱出ゲーム。これは完全にハマったね。今回も結論から言うと、脱出は成功。
今回はひとりで行ったのだが、またもや会場でid:kusigahamaと鉢合わせ。多分、同じような条件で公演回を選んでいるからだろう*1

参加前

私が持っていた全体公開ではない事前情報は、「会場がいくつかに分けられ、平行して進行する」という感じの話*2。あとはtwitterで@realdgameをfollowして情報収集。事前に気づいた事として、初日から脱出者の人数を「○○%くらい」と表現している。全員が同じように脱出成功/失敗するならば、そんな微妙な数字ではなく「○回は成功」みたいな表現をするだろうし、おそらく今回もチーム戦(ないし個人戦)だろうと見当をつけていた。今回は前回よりも1公演あたりの参加者数が多く、人数的にチーム制じゃないと厳しいし。

当日、開始前

1/10 16:30からの公演。
前回同様、入場時に首から下げるタイプのIDカードと、説明文を渡される*3。マークは「ペンギン」。説明文によるとチーム分けを示すもののようだ。この辺は予想通り。ペンギンを探し合流。女性1、男性1+私の3人編成。前回は5-6人*8チームでの分割だったけど、今回はずいぶん細かい。
入室時にチームごとに2つの部屋に分けて通される。ドアが重厚な音を立てて閉じる。テンション上がってきた!そして加藤さんからのルール説明。

  • 今回はチーム戦。チームごとに脱出できるかが決まる
  • 2つの部屋は「B-1」「B-2」と呼ぶ
  • 各チームはそれぞれの部屋を担当する「ペア」になっている
    • 例えば、「ペンギン」チームのペアは「火」チームでした。開始後に判明
  • B-1の謎のヒントがB-2にあったりする。ペアになったチームは協力しなければならない
  • ただし、情報のやり取りは「手紙」を介してのみ可能。直接会話はできない
    • 手紙は運営側の人間「郵便配達人」によって行なわれる
    • 携帯電話の番号交換とかメール交換とかは「空気嫁」。
  • 1つ謎を解く>回答を「判定室」に持ち込む>正解なら新たなヒントが得られる
  • 最終目的は、誰も見つけた事の無い「扉」の中にあるものを見つける事
    • ちょっとうろ覚え

ゲーム中

謎の詳細は書いても単なる説明になっちゃうのでパス。リアル脱出ゲームの公式サイトで公開すると言っていた気がするのでそちらを参照。

時は流れ、「残り、30秒」のアナウンス。未解決のパズルは残っているが、手元には謎の文字を書いたカード群が集まりつつある。このカードを組み合わせる事で得られる情報で脱出ができるはず(リアル脱出ゲームでは、全てのパズルを解ききらなくても脱出が可能な場合がある。前回は「30点」で脱出に成功したチームもあったそうだ)。そしてカードを並び替えるとどんな文になるかはおおよその見当がついた。が、それが何を意味するのかが分からない!
タイムアップ。「この部屋を、閉鎖します」。照明が落ち真っ暗になる部屋。あー、今回も敗北か。。。「次の部屋に移動してください」ガラガラガラガラ。。。あーはいはい、解説は向こうなのね。移動移動っと…

そこには、床中に張り巡らされた紐、そして張り付けてある謎のカタカナ。「残り時間、10分です」。
ΩΩΩΩΩΩΩΩΩ<な、なんだってー!(参加者一同)

終盤戦

ゲームはまだ終わっていなかった!壁の向こうにいたペアチームの「仲間」と初顔合わせ*4。前の部屋で得た謎のカードと、これまでに使ってきたアイテム、情報を元に最後の謎解きタイム。会場を走り回る人、議論をする人、沈思黙考する人。さまざまなチームがいる中、10分間はあっという間に過ぎる。
謎解きの結果得られる情報は、

  • 「最後の扉」の中にはある数字が隠されている
  • その数字を提出。正解ならば脱出成功

というもの。
当グループの提出した「最後の扉に隠された数字」は「9」。

  • 前提として、今回のゲームは、協賛としてチュンソフトの脱出ゲーム『極限脱出 9時間9人9の扉』がついている
  • 極限脱出 9時間9人9の扉』の最終目的は、「9」と書かれた扉から脱出する、というもの
  • このゲームのPVは待合室で流れるわビラは配られるわと、参加者全員に分かる形でアピールされている
    • (前回のスポンサーは作品名さえ忘れるようなとても地味な露出しかなかったのに)
  • これは、このゲームの存在自体が謎解きに必要な情報、という事だ
  • つまり「最後の扉に隠された数字」とは9なんだよ!

という推理。

そして答え合わせ。脱出成功!
ただし、「9」へ行き着く手段は「リアル脱出ゲーム」の範疇で提示されていて、『極限脱出 9時間9人9の扉』はヒントではなかった。つまり、正攻法での脱出ではなかった*5。そんなわけで、あと一歩のところで完全勝利には至らなかったけれど、充実感ある結果でした。

個人的感想

今回の僕は

  • 経験者という事もあり、チームをリード。「それは情報足りないんだろう、あとあと!」とか
    • 情報足りてるのにスルーした謎もありましたが!
  • パズルと見せかけて単なるなぞなぞ、駄洒落だったクイズに正答
  • ラジオから聞こえてくる謎の謎解き
  • 合流後の「逆さまにして聞け」の謎解き

辺りをできて、個人的にはだいぶ貢献した感があって満足。時間のかかる難しい謎は任せっきりだったけど。
それなりに充足感、達成感があり、勝利こそできたが完全勝利ではなかった、という意味で、今回のゲームはかなり楽しめたし、次回も参加しようと思えた。

楽しい場を提供してくれた恩返しとしての、細かな感想、要望としては(一部はアンケートとかでお伝えしたけど)

  • 会場の雰囲気や、大きな演出や展開は満点。特にラスト10分はもう無我夢中だった
  • 今回は椅子と机に座って解く謎が多く、そこが微妙。もっと物理的な仕掛けが欲しかった
    • カフェパーティでの中継も、動きが少ないために状況が分からなくなってしまう
      • 前回の開催は「物理的な謎が多い(手元を見たり話の内容を聞けなくても、どの謎を解いているかがすぐに分かる)」「ドラマティックなシーンがある(演劇型の「イベント」や、脱出成功/失敗が一目瞭然な形で示される瞬間)」という意味で、とても動画中継向きだった
  • 殺人の謎だけは正直酷い。容疑者が少なすぎるし、推理根拠が薄弱すぎる
  • 「ダジャレはどうなのよ?」って言っちゃったけど、振り返ってみるとああいうのもアリ
  • 脱出の達成感が微妙。仕組み上難しいのは分かりきっているが、やっぱり最後はドアから「脱出」する形で締めくくりたかった
  • ものが少なかったから仕方ないが、情報が全然隠れていないのはどうなのだろう。ざっと見回すだけで、全てのヒントが発見できてしまう
  • 2つの空間に分離するなら、「一方の部屋では自明な条件が、もう一方の部屋では思いもよらない」という叙述トリックっぽい仕組みとかが面白いと思った
    • 今回だと例えば、B-2の人はほぼ全員「B-1側には殺人現場があり、そこには男か女が横たわっているのだろう」と当初考えたはず。現実には、B-1には白線だけが残っていて、死体は存在しなかった
    • B-2>B-1だと、最初のやり取りでB-2にいる男の服装を伝達したチームは少なかったはず。これ見よがしに置かれた遺留品は当然伝えるが、男の服装や、そもそも座ってるのが女ではなく「男」である事とかは、B-2には自明すぎて伝達対象外になりがち
  • もっと「文字として伝達しにくい情報」があっても楽しかった気がする
    • 例えば絵とか、アイテムの物理的形状とか、ジェスチャーとか
    • でも、推理ゲームの範疇を外れた遊びになっていく気もする

『極限脱出』

最後に、『極限脱出 9時間9人9の扉』との関連だけど、最後の答え以外は「知ってるとニヤッとできる」というレベルのものが多い。偶然の一致があるかもだけど、気づいたのは以下の点(以下、999のネタバレ)。

  • 回答をチェックする部屋のドアのデザインがちょっと船室っぽい。『999』の舞台は
  • 今回のリアル脱出ゲームは「ある心理学の実験」だとアナウンスされ、ゲームはふたつの部屋に分けて実施された。これは『999』の9年前のノナリーゲームと同じ
  • リアル脱出ゲームでは最後に2つのチームが合流するが、これは『999』でふたつの扉に分かれて入ったメンバーが、後で合流するのと一緒

昨日書いたゲームのレビューはこちら。極限脱出 9時間9人9の扉 - いま作ってます。

*1:ちなみに一緒に行かなかったのは意図的。知り合いと一緒に参加して楽しむのもひとつの楽しみ方だと思うけれど、初めて会った知らない人と協力して謎を解くのがこのゲームの基本だと思っている。仕掛人であるSCRAPの加藤さんも同じような好みのようで、知り合い同士で行っても、そもそも会場で別チームにバラされてしまう。友達同士で協力してやりたい、という考え方にも共感できるけど、せっかく「異世界」に突っ込まれるのだから、その辺をリセットして楽しむのが本道じゃないかなぁ、と。一緒に参加できるイベントは他にも沢山あるし

*2:以前書いた「脱出ゲームの作り方」の席で、「J=キャロル」さんが故意か過失か漏らしていた

*3:この説明文には、事前情報には含まれない情報も含まれるので、参加する場合は必ず目を通すべき

*4:知人がいたりする事もあり、厳密には初ではなかったりする事もあるが

*5:尤も、「9」になったのは『極限脱出 9時間9人9の扉』がスポンサーだからそこに関連づけたのであり、あながち的外れな推理とも言えない。後に加藤さん曰く、「答えが数字で、スポンサーに9がキーワードのゲームがついてるから9、というメタ推理をしようが、正攻法で謎を解こうが、同じく正解である」との事。リアル脱出ゲームではルールの範囲内ならばあらゆる手段が許容される、という事だろう

極限脱出 9時間9人9の扉

極限脱出 9時間9人9の扉

極限脱出 9時間9人9の扉

神ゲー伊集院光も 絶賛!
謎解きのあるノベルゲームか、もしくは「脱出ゲーム」が好きなら是が非でも買うべし。

※以下レビュー。楽しみを阻害するようなネタバレは含んでいないつもりです。

ゲームは画面をクリックして謎を解いていく「脱出パート」と、幕間のノベルパートに分かれている。脱出パートの途中でノベルが挟まる事もある。脱出パートの解は1部屋に1通りだけど、ノベルパートの選択などでシナリオが分岐し、複数周回しないと真エンドにたどり着けないタイプのゲーム。

脱出パートだけど、完成度が高い。ブラウザでやる脱出ゲームって

  • クリック判定が狭すぎだったり、クリック判定の所在が不明だったり
  • できる事とできない事がよく分からなかったり
  • 謎が隠されている場所があまりにも見つけづらかったり
  • 行動と結果の因果関係が物理的に滅茶苦茶で「あれをするにはこれをしなければいけない」という対応関係を推理に使えなかったり
  • ヒント少なすぎでカンが必要だったり

して、謎解きと関係ない場所で理不尽なストレスがたまりがちだけど、それが極めて少ない。きちんと考えて、怪しいところを一通り調べて、常識的な行動をすればちゃんと謎が解ける。なので、こういう下らないストレスに悩まされる事なく、謎に集中できる。

ノベルパートだけど、正直当初はおまけだと思ってた。凄い。脱出ゲーム抜きで、ノベル部分だけでもボリュームを膨らませればひとつのゲームとして成立するクオリティ。流石は『街』『428』『かまいたちの夜』のチュンソフト。伏線の張り方もミスリーディングも巧みだし、盛り上げ方も絶妙。テンポもその辺のエロゲーみたいに無駄なテキストを増やしたりせず、サクサク進められる。ノベルで気に食わなかったのは、エンディングで意味不明な次回への伏線を張っていった事。こういうの、セコいから止めてほしいものだ。次回作が出なかった場合に最高にダサいし。あと、ノベルパートの謎解きが勝手に進んだ感があって、ちょっと欲求不満。『かまいたちの夜』のように自由文を入力させろとは言わないが、『逆転裁判』の裁判パートみたいな「自分で謎を解いてる感」が欲しかった。

主な不満はシステム面。セーブが一カ所なのは仕様だろうけど、周回プレイ前提なのに、既読テキストのスキップ機能はないし、全く同じ脱出パートを複数回解かなければいけない。「脱出パート内のノベルパートで分岐する事もあるから、脱出パートを丸ごとスキップさせるわけにはいかなかった」という事情は分かるけど、その辺もう少しなんとかならなかったのかと思わざるを得ない。まあ、パズルの解法とかを丸ごとメモる事でだいぶ周回プレイ時間を短縮できるけど、それならそれでゲーム内にユーザーがメモを残せるようにしても良かったと思う。あと、ルート同士が交差していたりして、周回ルート管理もしにくい。それでも、『逆転裁判』とかよりは遥かに快適だけど(まあ、周回プレイを想定していない逆転裁判と比べるのも無い話だけど)。

総評としては、買い。些末なシステム面の不満はあるが、余裕で許容できる範囲だし、それを補ってあまりある魅力がある。

関連リンク

公式サイト:極限脱出 9時間9人9の扉

リアル脱出ゲームの作り方を聞いてきた

ある少女は、お母さんに「地下室の扉を絶対に開けてはいけません」とずっと言われ暮らしてきました。しかしある日、少女は扉を開けてしまいました。そこで少女が見たものは?

“リアル脱出ゲームの作り方” ※ 一般:各 1,000円/フリーパス会員:無料 : 2009.12.17 Thu - MAGNETICS
リアル脱出ゲームを主催(でいいのかな?)している方の講演を聞いてきた。
というか、内容の前にアレだ、お前らiPhone買いすぎだ。会場の驚異的なiPhone率に吹いた。過半数行きかねない勢いでiPhone
「作り方」の部分の内容をざっくり箇条書きでまとめるとこんな感じ。名刺サイズのカードの裏にちょこちょこメモっただけなのでだいぶ事実誤認があるかも。

  • まず考えるべきは場所、予算・価格、人数などの制約条件。大きな枠組みでの仕組み
    • 広い会場で驚いた話など
  • 次に大事なのはタイトル
    • たとえば「廃校からの脱出」の「廃校」と言う単語は、ホラー、ミステリー、ノスタルジーなど様々なイメージを想起する強力な単語
    • 「面白い」はある意味当たり前に到達すべきもの。それ以前に「面白そう」であることが大事。
  • 「知っているけどやった事がない」は強い
    • 「酒場で仲間を集めパーティを組む」「赤外線センサーをくぐり抜けて進む」「ラスト5秒で脱出」「全力でダッシュするすぐ背後で次々閉じていくシャッター」、どれもみんな知っているが、やった事はない
    • 知っているので説明不要で即没入できる、みんなやってみたいと思っていた事なので楽しめる
  • 安易にパズルに頼らない
    • 可能な限り物理的な仕組みを使ったりする
    • パズルは「解けないと苦しい→解けた」という開放感。問題を解いた開放感。それは、選択肢が提示されない状況で何かを閃いた時の快感とは違う。
  • ここまでで面白いものを組み立てて、プラスアルファの要素がサプライズ
    • 突然の事件、みんなで協力など。
    • あくまで追加要素。土台のない状態でここから考えても微妙
  • 他人に見せて意見を集めるフェイズでは、「感覚」の意見を重視する
    • なんとなく面白くない、このタイミングでこれは気持ちよくない、と言われたら撤去
  • コンピュータゲームは「制約下でどう実現するか」。リアル脱出ゲームは「どう制約して実現するか」。無限の自由度を持つ現実に、制約を加えることばかり考えている

他に、ARGの流行や、最近のライト層へのパズルの普及などについても触れていた。ものをつくっている人の話は、いつだって面白い。
あとついでに、銃をぶっ放していた女性から、ちょっとだけ次回公演の話を聞いたりした(ゲーム内容には一切関係ない部分だけど)。
ちなみに、冒頭のクイズは会場で講演前に出されたもの。答えは「外の世界」。「脱出」ゲームの枕としては気が利いてますね。