ソフトバンク発表会祭に見る、孫正義の「現実歪曲時間」
ここ1年で最高の祭だった。iPad祭が吹き飛ぶ勢い。
ustに目を付けるのは流石、というレベルだが、凄いのは、それを「祭り」に仕立て上げた手腕。神がかっているとしか言いようがない。
まとめ
経緯とか
各ニュースサイトに取り上げられたのは、おおよそ15:00以降*1。
経済、株価、ビジネス、政治のニュース:日経電子版(15:04)
ソフトバンク、動画中継の米Ustreamに約18億円を出資 - CNET Japan(15:20)
ソフトバンク、Ustreamに18億円出資 - ITmedia NEWS(15:46)
そしてustでの配信がなされた決算説明会が16:30。
旧来の演出的な考え方だと、この規模の発表は、ニュース自体のバリューを最大化するように決算説明会の場で同時に行なうのが普通だろう。複数の発表をまとめて大きなものにし、話題性を大きくする。
意図的に日付をずらすにしても、数日とか一週間程度のスパンを空けるだろう。各発表が被らないようにして、自社の名前が露出する機会を最大化するのが狙い。常に何かしらの動きがあるイメージを演出する事で、活きのいい企業、というイメージを与えられる、という効果もある。
リアルタイムと参加のリズム
今回ソフトバンクが仕掛けたのは、このいずれでもない。
投資の発表から決算説明会までのおよそ1時間30分の間隙は、新聞やニュースサイトでの情報流通を考えたものではない。投資の発表がtwitterでbuzzる事を予測し、彼らを即時決算説明会に誘導し、さらなるbuzzを狙いに行くための最適なリズムを選んでいる。明らかに「リアルタイムweb2.0」の流れを踏まえた上でのリズム感で、見事としか言いようがない。
投資発表がもう1時間早ければ熱は冷めていただろうし、もう1時間遅ければ参加者は激減していただろう。日本国内でここまで見事にリアルタイムwebを活かしきった出来事は、間違いなく歴史上初だ。
ustへの投資発表という撒き餌で人々をustに集め、自社の発表会を「視聴」させるのではなく、一体感を持って「参加」させる。一方通行であるはずの決算発表会というイベントを、ニュースリリースのタイミングひとつで参加型の「祭り」へ変質させる。発表会を本当に「イベント」にしてしまったニコニコ動画とは違う形で、参加型の発表会を見事に実現した。
その「時間」にいた人を引き寄せる
元々ソフトバンクは、Appleのような強大な信者軍団を持っているわけでもなかった。にも関わらず、ちょっとしたニュースリリースの仕掛けで、たまたまtwitterをその時間見ていただけの人々を、熱狂の中へ引き込んだ。
ジョブスのgoogle:現実歪曲空間のように、世界を創り、信者たちによる「場」を作るわけではなく、その瞬間に居合わせただけの人を否応なく引きずりこむ、いわば「現実歪曲時間」を発生させるセンスは見事*2。
おまけにこれが単なる自社の露出機会獲得ではなく、今後ustを売り込んでいくための布石にもなっているのだから見事だ。要するに「twitterとustreamを使えば、世界をここまで変えられる」というのを自ら実演してみせたわけだ。
実に見事。